「ーー公平。今、ちょっといいか?」
告別式も無事に終わり、部屋の片隅で食事をとっていた俺は、その声に視線を上げると声の主を見た。
するとそこには、昔の面影を残しつつも立派な大人へと成長した司と隆史がいた。
「……あぁ」
面倒臭そうに答えた俺の態度を特に気にするでもなく、二人は俺の前へ座ると口を開いた。
「「ごめんっ……」」
ーーー?!
俺に向けて頭を下げる二人を見て、予想もしていなかった展開に面食らう。
(あの二人が……。俺に、謝るっていうのか?)
目の前で頭を下げ続ける二人の姿を見つめながら、一度小さく溜息を吐くと重い口を開いた。
「……いいよ、もう」
(……何だか拍子抜けだ)
そう思った俺は、それだけ告げると席を立った。
気分転換にと外での一服を終えると、再び部屋の中へ戻ろうと玄関扉に手をかける。
「ーー公平には、近付くなよ」
ーーー!
中から漏れ聞こえた話し声に、扉から手を離すと身を潜める。
(俺の事……?)
何やら、俺の話しで揉めている隆史と河原さん。
俺はその会話に耳を傾けると、息を殺した。
「ーーあいつはっ! ……死んだ親父に、ソックリだよ!」
河原さんのすすり泣く声が聞こえた後、パタパタと走り去る音を残して静かになった扉の向こう側。
俺はゆっくりと扉を開くと、中に向かって話し掛けた。
「ーー隆史。二人きりで話し、いいかな? ……裏庭に行こう」
突然現れた俺に驚いた顔を見せる隆史。
そんな隆史を見て、俺はゆっくりと口元に弧を描くとニヤリと微笑んだーー。


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