ーー翌日。
いつものように学校へと行った俺は、誰も教室にいない時間帯を見計らうと、智が大事にしているペンケースをコッソリと盗んだ。
智が筆箱代わりに使っている、少し変わった型のこのポーチ。
海外旅行に行った親戚からのお土産だとかで、そんな話しを教室で自慢気にしていた智を思い出す。
俺は手元のポーチを宙にかざすと、パッと手を離して井戸の中へと落とした。
ポーチの行方を目で追って見ていると、それは井戸の底へ着く瞬間ーー
まるで何かに吸い込まれるようにして、忽然と姿を消した。
「……ざまぁみろ」
何とも不可解なその現象を不思議に思いながらも、爽快感からフッと鼻から息を漏らしてほくそ笑む。
「ーーおいっ!! 公平っ!!」
ーーー?!!
突然の声に驚くと、ビクリと肩を揺らしてゆっくりと後ろを振り返る。
「ペンケース盗んだの、お前だろっ?!!」
そう叫んだ智は、酷く怒った顔で俺に向かって突進してきた。
既の所でそれをかわすと、智を睨んで口を開く。
「……そんなの知るかよっ!!」
「お前以外に、誰がいるんだよっ! ……貧乏人がっ!!」
掴みかかって殴ろうとする智をかわしながら、必死にその場で転げ回る。
何とか立ち上がって、逃げようと背を向けたその時ーー
グイッと背後から髪を掴まれ、その痛みに思わず顔が歪む。
(くそ……っ!)
頭にきた俺は、手元に転がる石を掴むと後ろを振り返った。
振り向きざまに、力任せにその手を大きく振り上げる。
ーーーゴッ!
0