君は愛しのバニーちゃん

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3 グッジョブ、山田

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※※※



 キャッキャとはしゃぐ美兎ちゃんの背を眺めながら、その眩しすぎる光景に感嘆の息を漏らす。


(これが、天使の戯れというやつか……?)


 外に出てからというもの、美兎ちゃんの関心はすっかりと『山田さん』が独占状態でいささか邪魔ではあるのだが。
 こんなにも可愛らしい光景を見せてくれるのなら、潰れた不細工な顔も、少しくらいは大目に見てやろうだなんて、寛大な気持ちになったりもする。


(……感謝しろよ、山田。いや……感謝するのは、俺の方か?)


 それにしても、さっきからヒラヒラと揺れ動くスカートは、今にも捲れ上がってしまいそうでヒヤヒヤとする。

 ラッキースケベは俺としては勿論大歓迎なのだが、他の野郎には1ミリたりとも見せたくはない。


(見んじゃねぇ……! 見たら、ブッ殺すっ!!)


 通りすがりのサラリーマンにガンを飛ばせば、青白い顔をして足早に去ってゆく。


「瑛斗先生っ! 早く、早くぅ〜!」


 満面の笑顔で振り返り、俺に向けてヒラヒラと手招きをする美兎ちゃん。

 天国へのご招待にいざなわれ、ドスの効いた顔から一瞬で破顔させると、フラフラと宙を舞うように美兎ちゃんの元へと近付く。


「お待たせ。美兎ちゃん(マイ・ワイフ)」

「もぅ〜! ちゃんと着いて来てね?」

「ごめん、ごめん。ちゃんと着いてくよ(一生)」


 イチャイチャしながら、一人脳内で家族ごっこに励む。


(……最高かっ!)


 残念ながら子供の顔は少しばかり不細工気味だが、美兎ちゃんとの子供だと思えば、不思議と愛しさが込み上げてくる。


(お前、よく見りゃ可愛いな……)


 そんなことを思いながら足元を見れば、美兎ちゃんの足首をペロペロと美味しそうに舐める山田。


(……。……やっぱお前、ムカつくっ!!)


 幸せ気分は即終了。


(俺のハッピータイムを、返しやがれ……っ!)


 そう思ってガンを飛ばせば、ビクリと震えた山田が一気に走り出した。


「……きゃっ!」


 突然の出来事に、美兎ちゃんの手元から離れてしまったリード。
 首輪からリードを垂らしたまま、ダッシュで駆け抜けていく『山田さん』。


「ダメ〜ッ! 山田さんっ! 待ってぇ〜!」


 半泣きで『山田さん』を追い掛ける美兎ちゃんの横を通り過ぎると、俺は勢いよく仔犬に向かってダイブした。


(……っこの野郎。美兎ちゃんを泣かせるとは、いい度胸だな……)


 溢れ出る怒りを抑えつつ優しく抱き抱えれば、遅れて追い付いた美兎ちゃんが口を開いた。


「……瑛斗先生、ありがとうっ! 大丈夫?!」

「うん、大丈夫。はい、『山田さん』。もう、離しちゃダメだよ?」

「……っうん。ごめんなさい」


 未だ半泣き状態の美兎ちゃんにそっと『山田さん』を返してやれば、愛おしそうにスリスリと頬を寄せる美兎ちゃん。


(……うん。そのご褒美、俺が欲しかったわ)


 そう思って山田に目を向けたその時ーー



ーーーー?!!?!!



「……っみず……っ?!!?!!」

「……え? 水……? キャーッ!! 瑛斗先生、鼻血ッ!!」
 

 俺の鼻からタラリと垂れる鼻血を見て、一人アタフタと焦る美兎ちゃん。
 そんな姿を他所に、俺は目の前の光景を眺めて鼻の下を目一杯伸ばした。


(……グッジョブ、山田)


 俺は心の中で、山田に向けて称賛の親指を立てた。

 美兎ちゃんに抱き抱えられた山田の足にはスカートが引っかかり、見事に捲れ上がったそこには、水玉の可愛いパンツが広がっている。


(最高のご褒美だよ……。美兎ちゃん、ありがとうっ!)

 
 俺はそのご褒美を堪能すべく、一瞬たりとも気を抜かずにガン見し続けたのであったーー。




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