歪ーいびつー【完】

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 キャンプファイヤーも終わり、テントへ戻ろうと夢達を探していると、背後からポンッと肩を叩かれて振り返る。
 ーーするとそこには、涼がいた。


「優雨。ちょっと、2人きりで話しがしたいんだけど」

「……うん。わかった」


 そう返事を返すと、黙って涼の後を着いてゆく。
 そのまま2人で川辺まで行くと、周りに誰も居ないのを確認してから岩場へと腰掛けた涼。
 

「優雨もこっちおいで」


 そう声を掛けられ、黙って隣に腰を下ろす。


(涼の話しって、何だろう……。……っ! もしかして……っ。あの、テントの中の出来事なんじゃ……)


 そう思った途端、緊張で額に冷や汗が流れる。


「あのさ……。もう夢にああいう事するの、やめてくれないかな……」

「……っ! あ、あれは……っ! 起きない夢を、からかっただけだよ!」


 突然話し始めた涼に焦った私は、息つく間もなく咄嗟に言い訳の言葉を並べる。


「キスくらい……、女の子同士でふざけてやったりするし!」

「……そう」

「そ、そうだよっ!」


 何とか誤魔化そうと、必死に言葉を繋げる。


「俺さ……。その前から、見てたんだ」



ーーー!?



 その言葉に驚いて顔を向けてみると、そこには、悲しげな表情をさせて私を見つめる涼がいる。


「ごめん。……全部見てたんだ」

「……っ!」


 私の顔は瞬時にカッと熱を上げた。


「……誰にも言わないから。もう、夢にあんな事はしないで。……言いたかったのは、それだけだから」


 悲しそうに微笑んだ涼は、それだけ告げるとおもむろに立ち上がった。

 無意識に、立ち去ろうとする姿を目で追って見ているとーー
 視界に入ってきた、涼の手首に付けられたブレスレット。そこには、ピンクの貝殻が付いている。


 ーー先程、テントの中で嬉しそうにブレスレットを見つめていた夢。


『あの2人は両思い』


 そんな光景と言葉が、グルグルと頭の中を駆け巡る。


「……さ……い……っ」

「え? ……何、優雨」


 私の声に反応した涼は、岩場の上で立ち止まると私を振り返った。


「ーー夢は渡さないっ!!」


 大きな声でそう叫ぶと、私は目の前の涼を突き飛ばした。


 ーーそれは、やけにスローモーションに見えた。

 驚きに目を見開く涼の顔。ゆっくり、ゆっくりと後ろへ倒れてゆく身体。
 岩から離れた足は、宙を舞いーー


 そしてーー


 まるで暗闇に飲み込まれるようにして、涼の姿は川の中へと消えていったーー





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