歪ーいびつー【完】

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「夢。……ほら、いつもみたく口を開けて?」


 私の顎を掴む奏多くんは、そう言って優しく微笑んだ。
 躊躇ためらいながらも小さく口を開けば、奏多くんはそこへ舌をねじ込ませて私の口内を好き勝手に侵してゆく。


 ーー楓くん達と揉めた日以来。
 奏多くんは、毎日私にキスを求めるようになった。

 当初、勿論私はこの行為を嫌だと拒んだ。
 この行為は、罰でしか与えられないものだと思っていたから……。

 拒む私に怒り出した奏多くんを見て、黙ってこの行為を受け入れるという選択肢しかないのだとーー私はそこで、初めて知った。


 何度も私の口内を堪能した奏多くんは、その行為に満足すると私を解放する。
 私の頬に流れる涙をそっと拭った奏多くんは、「いつまで経っても慣れないね、夢は。……可愛い」と言って恍惚こうこつとした表情をさせる。


 ーーそんな奏多くんが私に求めたのは、キスだけではなかった。

 更に交友関係にうるさくなっていった奏多くんに、優雨ちゃん楓くんは勿論の事、その他一切の男の子達と言葉を交わす事を禁止された。

 朱莉ちゃんとも何故か疎遠になり、私の学園生活はほぼ、奏多くんと2人だけの世界になってしまった。
 奏多くんに従い、奏多くんが怒れば謝る。

 私は1人、泣きながらそんな日々を過ごしているーー



「それじゃあ夢、また後でね」


 私の目の前で優しく微笑む奏多くんは、「今日も、良い子でいるんだよ」と私の耳元で囁くとその場を去ってゆく。

 私はそんな奏多くんの後ろ姿を見つめながら、大好きな涼くんの姿を思い浮かべた。

 いつも私の側にいてくれた涼くん。
 私が困っている時には、必ず手を差し伸べて助けてくれた。


(ーー涼くん、助けて……)


 薄れる意識の中、私は居るはずのない人へ向けて助けを求めるとーー

 静かに涙を流しながらそっと瞼を閉じた。




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